第63章 敗北ばかりの調査兵団
「兵長…!!棺桶2つ…馬車に乗せます!」
「…もう間違いないな…奴らが死体と寝る趣味を持つ変態じゃなきゃ、あれは第一憲兵で…棺の中身はエレンとヒストリアだ。」
「はい、兵長がこの街を通ると踏んで先回りしたおかげですね。」
「………」
確かに自身の予想が当たり、2人を見失わなわずにロッド・レイスの元まで辿り着けそうなのだが、リヴァイは妙に引っかかるモノがあり、周りに目を光らせていた。
「それが何か妙だ…今までの第一憲兵の手際とは違うようだ。リーブス商会をグルだと睨んだあたりといい…どうも思考が俺と被る。俺…というより、ヤツか…」
「…?ヤツとは?」
「おいニファ、“切り裂きケニー”を知ってるか?」
「え?都の大量殺人鬼ですか?彼を捕らえようとした憲兵が100人以上も喉を裂かれたという…で、でもそれは何十年か前に流行った都市伝説ですよね?」
「そいつはいる…」
「え…?」
「全て本当だ…ガキの頃、ヤツと暮らした時期がある。」
「えぇ?!どうしたんですか急に…兵長ったらこんな時に冗談を言うなんて…」
ニファはリヴァイが地下街出身である事は知っているが、“切り裂きケニー”の事件については身近な話ではなかったため、ニファにとっては都市伝説という架空の人物でしかなかった。
そのためリヴァイが冗談を言っている風にしか聞こえなかった様だ。
「……………」
ニファの中では完全に都市伝説になっている。
リヴァイは詳しく説明するのはやめて、この状況を今一度よく考えてみた。
……思えば俺の思考はヤツの影響が強い…
目標を集団で尾ける時は…
両斜め後方と…
見晴らしのいい高台…
リヴァイはケイジとパドリックの位置を再確認すると、前方からかすかだが人の気配を感じた。
「…………!?」
それは一瞬の出来事。
「ニファーーー!!!」
リヴァイの叫び声と同時に2発の銃声が至近距離で鳴り響いた。