第63章 敗北ばかりの調査兵団
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一方リヴァイ達は棺を2つ積んだ葬儀屋に見せかけた馬車を追い、宿泊したであろう宿の前で張り込みをしていた。
そろそろ動きがあっても良さそうだが宿の玄関周りはまだ静かだった。
「まだ動きませんね……」
「あぁ、たがもうすぐだろう。」
少し離れた建物の屋根の上にはリヴァイとニファが身を潜めながら宿をマークしていた。
「兵長?こんな時にお話する事ではないと思うのですが……」
「ん?なんだ?」
ニファは望遠鏡から顔を離さず宿の方向を見つめたまま話し始める。
「この一件が落ち着いたら、1日クレアを借りてもいいですか?」
「はぁ?!」
いきなり突拍子もない申し出に、変な声が出てしまった。
「いきなりすみません…この間の夜団長の所へ伝達に行った時にクレア、私に護身用のお守りを作って渡してくれたんです。そのお礼がしたくて…」
「護身用のお守り?」
リヴァイはそんな事は初耳だったが、よくよく思い出してみれば、あの時慌ててあの場を後にしていた。
おそらくその時に用意したのだろう。
「はい、こんな物を私のために作って出発前に持たせてくれたんです。それが嬉しくて。」
ニファは大事にポケットにしまっていた細長い瓶をリヴァイに見せると一瞬だけ望遠鏡から顔を外してリヴァイの方を向いた。
「なんだそれは…?」
「料理酒に塩と唐辛子をいれた物です。襲われそうなったら顔めがけて投げつけて時間稼ぎにしてくれって。すごいアイデアですよね。」
「…………」
酒に塩に唐辛子。
可愛い顔してえげつないモン作るな。
リヴァイはそんな感想で頭がいっぱいだった。
「よくあの短時間で思いついたもんだ…まぁいい、この一件が片付けば少し休暇も出るだろう。その時にでも連れ出してやってくれ…」
「ありがとうございます。」
軽く会釈して再び視線を宿に向けると、中から黒ずくめの男たちが出てきた。