第63章 敗北ばかりの調査兵団
「クレアさん……」
そう、リヴァイは人を殺してきた過去をもつが、決して暴力的な人間ではない。
時には厳しい事も言うが、常に仲間想いだ。
後輩だったアンドレを身を呈して助けたり、恋人を失った部下エルドの部屋で一晩中寄り添ったりと、無表情で少し怖い顔をしているが、その中身は人一倍温かい。
その優しさに何度自分は助けられただろうか。
そして、何度勇気づけられただろうか。
それはもはや数え切れない程だ。
「ヒストリアにした事だって、乱暴に見えたかもしれないけど…でも誰かがあぁするしかなかった。あの場でヒストリアがイエスと言わないまま時間が過ぎれば、最悪みんな殺されていたかもしれない。それに、ヒストリアが私達から逃げるという選択をしていたら…?中央第一憲兵に捕まったヒストリアの命にこの壁内の行く末はどうなっていたと思う?」
「……………」
少しでもリヴァイの事を理解してほしくて、1人の兵士として話をしたクレアだったが、言いたかった事は伝わっただろうか。
皆険しい表情のままでなかなかその中の感情までは読み取れなかった。
「どんなに嫌でも…もうクーデターは始まってしまってる。人を殺せという命令は確実に出る。でももうやるしか生き残る道も…ウォール・マリアを奪還するという目的も失われてしまう。だからみんなも、腹を決めて欲しい。」
ミカサはリヴァイの優しさを知る人物の1人だ。
巨人化したアニと戦闘した時、命令に背き危うく殺される所を助けてもらった。
審議所でエレンに暴力を奮ったリヴァイの事が心底嫌いだったが、リヴァイは自身の脚を犠牲にしてまで自分とエレンを助けたのだ。
そんな出来事があったため、ミカサはリヴァイを頭ごなしに否定する事ができなかった。
クレアとミカサの話に何か思う所があったのか、ジャン達は無言のまま移動と尾行の準備を始めた。