第9章 駈けだす想い
「ああ、地下牢に入れて、今はモブリットに監視をお願いしてある。リヴァイとはすぐそこで会ったんだ。とにかくクレアの具合が心配でね…横になっていなくて大丈夫なのかい?」
「おい、エルヴィン。話の前に風呂に入れてやれ。」
リヴァイはベッドの前までくると、いつも大浴場に行くときに使ってるバッグを手渡してくれた。
「お前の同室のフレイアに頼んで、風呂道具と着替えを用意してもらった。悪いが、俺から状況を説明させてもらったぞ。すごくお前の事を心配していたから部屋に戻ったら話をしてやってくれ…」
「わざわざ女子棟までありがとうございました…フレイアにはまたあとで私から話をしておきます…」
「クレア、医務室の奥にシャワー室があるんだ。こっちだよ。おいで。」
ハンジに案内されてシャワー室まで行くと、脱衣所に入ったところでいきなり力強く抱きしめられた。
──ギュッ──
「ハ、ハンジさん!」
「クレアゴメン…本当にゴメンね!!もっと私がしっかり側にいてあげてればこんなことには…こんな酷いことにはならなかったのに…」
ハンジの声からは後悔や悔しさが滲みでていて、クレアは今回の事故を招いてしまったことを心の底から反省をした。
「そ、そんな…謝らないで下さい…いけないのはちゃんと警戒していなかった自分です。ハンジさんではありません。…ザズにも言われました。私はハンジさんにべったりだから、ハンジさんの名前を使えば呼び出せると思った。って。今回の事故を招いたのは私自身です。本当に反省してます…」
「クレア……」
今一度力を込めて抱きしめると、ハンジは頭をクシャクシャっとなでて脱衣所を後にした。
誰のことも責めようとしないクレアの態度にいじらしささえ感じる。
医務室の方に戻ると、ソファに腰掛けているエルヴィンとリヴァイに医師が診察した内容を説明していた。
暴行の内容
妊娠や感染症の心配はないこと
大きな外傷はないこと
精神状態は不安定だが錯乱はしていないこと
訓練や日常生活に制限はないこと
特に、無理に休ませる必要はなく、本人が訓練をしたいのであればやらせてもいいそうだ。
なるべく本人のやりたいことをやらせて気を紛らわせてあげるのが1番だと医師からはアドバイスがあった。