第9章 駈けだす想い
「クレア…落ち着いて…」
ハンジが隣に座り背中をさすってやると、少し落ち着いたようにみえたが、顔色はまだ悪い。
「う…ハンジさん……すみません…」
「すまない、辛いとは思うが、場合によっては緊急な処置が必要なこともある。……そうだね、はい、かいいえ、で答えられる聞き方にしよう。」
そうすると、医師は言葉を選びながら慎重に問診を進めた。
「殴られたり、蹴られたり、大きな外傷はありそうかな」
「いいえ……」
「膣の中を乱暴に触られたりしたかい?」
「いいえ…」
「挿入はされていない?」
「されてません…」
「男性器を口にいれるよう強要されたかい?」
「はい…」
「射精された精液を飲むよう強要はされたかい?」
「はい…」
「それは複数回だったかな?」
「はい…」
「今胸のつかえや吐き気はあるかな?」
「はい…」
「その他に苦しいところはあるかい?」
「ありません…」
「問診に答えてくれてありがとう。妊娠や感染症の心配はなさそうだ。吐き気は精神的な要因と精液を飲まされたことによるものと2通り原因があるから、吐き気止めの薬をだしておこうね。」
医師は相槌をうちながらカルテに記入すると、薬を処方するため、椅子から立ち上がった。
「…わかりました。ありがとうございます。」
妊娠や感染症の心配がないとはいえ決して「よかった」訳ではない。
好きでもない男の性器を無理矢理口に押し込まれて何度も射精されたのだ。
クレアの心の傷は計り知れない。
新兵2人に対する怒りと、部下を危険な目にあわせてしまった責任感でハンジの心はやるせない気持ちでいっぱいだった。
──コンコン──
ノックの音がなり扉がほんの数センチだけあいた。
「ハンジ、中に入っても大丈夫か?」
「…リヴァイ兵長?あ、あの、問診は終わりました。大丈夫です。」
質問にはクレアが答えた。
問診の間席を外してくれたり、中に入っても大丈夫か確認をしてくれたりと、自分を気遣っての行動に思わず胸がいっぱいになってしまう。
しっかりと扉が開くと、入ってきたのはリヴァイとエルヴィンだった。
「あれ?エルヴィンも?あの2人はどうしたの?」