第63章 敗北ばかりの調査兵団
「だ…だめだよ!これからって時に…気に迷いがあったら殺されるのは僕達なんだよ?ね、ねぇ?ミカサ?」
アルミンだって人なんて殺したくはない。
リヴァイがヒストリアにした事だって、全部が全部肯定できるものではないと思っていたが、少なくとも今やるべき事、このクーデターの意味はよく理解しているつもりだった。
アルミンは耐えきれずミカサに助けを求めてしまった。
「……………」
無表情でジャン達のやり取りを聞いていたミカサがゆっくりと口を開く。
「リヴァイ兵長の異常性には最初から気付いてたけど、この現状を乗り越えるためには…私はリヴァイ兵長に従うのが最善だと思ってる…」
「ミカサ!!」
「それにみんな…クレアさんもここにいるのよ?もう少し言葉に気をつけて……」
「う……クレアさん……」
ミカサに指摘されてジャンもコニーもサシャもクレアの存在を思い出す。
話の内容が内容で、つい熱が入ってしまったジャン達。
姿が見えなかったためか、一瞬その存在を忘れてしまっていた様だ。
「ごめんみんな……私がここにいて…」
クレアは小さな身体をデイジーの影からひょっこりと出すと、気不味そうに頬をかいた。
「あぁ…!!クレアさんすいません!!俺…なんて言ったらいのか…その…」
「いいの!!気にしないで…ヒストリアの事は私も驚いたし…それに誰だって人殺しなんてしたくない…でも……」
両手を前に出してブンブンと振り完全に慌てふためくジャン達に、クレアは怒る様な事はしなかったが、1つだけ分かって欲しくてそのまま続けた。
「でも…兵長は…今みんなが思っている様な自分勝手で冷徹な人ではないよ。それは…私が兵長の事が好きだから言ってるんじゃないの…みんなよりほんの少しだけ長く見てきたけど、兵長は仲間想いの優しい人よ…誰よりも沢山戦って、沢山の命を看取ってきた人…命の重さや仲間の大切さが分からない人ではないわ…」