第63章 敗北ばかりの調査兵団
「それに…レイス卿さえ押さえれば…もしくは…この壁が造られた経緯や技術を残した記述がどこかにきっとある!エレンの巨人を“硬化”させる方法も…きっとどこかにあるよ。」
「それが全て上手くいったとしても……俺は…やっぱ御免だぞ、人殺しなんて…もしあの兵長に殺せって命令されてもできると思えねぇ。」
腕を組みながら険しい顔で話すジャンに、クレアの心臓がヒヤリと凍りつく。
「俺もだ、従わねぇやつは暴力で従わせればいいと思ってんだリヴァイ兵長は。ヒストリアにやったみてぇに!!」
「それも、商会にはあんなにへりくだったのにですよ!抜け殻みたいになったヒストリアにはあんな脅し方をして…きっと女王になった後も手駒として扱いやすいようにしたいんですよ!!」
「(ジャン、コニー、サシャ…)」
お願い…そんな風に言わないで……
ブラシをかけていたクレアは、デイジーの馬体でその身を隠すと心の中で何度も繰り返す。
リヴァイはヒストリアを手駒にしようとなんて決して思ってはいない。
そしてあんな風な脅した言い方も、したくてしたわけではないのだ。
関所の厩舎でリヴァイの目を見たクレアだからそう断言できる。
でも、それを今自分が言ってもいいものなのかが分からない。
リヴァイの恋人である自分がジャン達の今の会話に口を挟むのは、逆にマイナスにならないだろうか。
真実を伝えたくても、下手に庇う様なニュアンスでとらえられてしまったらリヴァイのイメージはますますマイナスになるだろう。
「……………」
考えに考えた末に、クレアは彼らの会話に混ざる事はせず、ただひたすらにデイジーのブラシがけに集中して気を紛らわした。
「…とにかく俺は…こんな暴力組織に入ったつもりはねぇ。あん時俺は…人類を救うためにこの身を捧げたんだ。」
頑なに自身の意志を貫こうとするジャンに、コニーもサシャも同調するような表情だ。