第63章 敗北ばかりの調査兵団
「まぁ…そうかも…だけど…私ならそんな人生は嫌だね。こうは思わないかフレーゲル?」
弱気になってベソをかくいい年した男に、少々苛立ちの様な気持ちもわいたが、フレーゲルは兵士ではないのだ。
父親に仲間を目の前で殺されればこうもなるだろう。
そう自身に言い聞かせる。
「一生天敵に脅えてネズミの様にコソコソ生きてくぐらいなら、命をなげうってでもその天敵に一矢報いてろうとは……」
「思わねぇよ!!!」
優しく諭そうと思ったが、言い終わる前に即答されてしまった。
「誰もがあんたらみたいな死生観で生きてるわけじゃないんだよ。ネズミの様な人生だって必死に生きてんだろ?…何もあんたに貶される様な筋合いはねぇよ…」
「…………」
ダメだ……
優しく諭そうと思った数秒前の自分をハンジは盛大に殴りたくなった。
この男は父親と違って、相当なヘタレらしい。
だが、フレーゲルは作戦が破綻した今、協力して欲しい最重要人物だ。
多少強引にでも首を縦に振らせるしかない。
「……フレーゲル!お父さんや仲間を殺した奴らがのうのうと生きてても!気にせず生きていけるって言うのか?!商会や家族に!!真実を教えてあげたくないのか?!」
「……は!?そりゃあんたらの都合だろ!?」
本心は中央第一憲兵が許せない。
父親と仲間の仇をとりたい。
父親が商人の目で信じると決めた調査兵団の疑いをはらしてやりたい。
しかし、今まで自分1人で決断し行動した事のないフレーゲルは、茨(いばら)の道を選択する勇気がなかった。
「都合…だと?当たり前だ!!お前も父を殺した人物が憎いなら、その都合を通してみろ!!いったい今の今まで父親の側で何を見てきたんだ!!」
「ひっ…!!」
ハンジから胸ぐらを掴まれると、情けない悲鳴を上げてしまう。