第62章 レイス家の真実
ハンジの飛躍した発想の数々が1つ1つ繋がっていき、段々と現実味を帯びてくる。
「だとすればエレンは器であって、交換可能な存在なんだ。王政が“叫び”の力を利用したいのならあの反抗期の化身の様なエレンにその能力を入れておくわけがないよ。できるなら…もっと都合のいい誰かにその能力を移すはずだ。ライナーがそう試みた様に…つまり、巨人のなんたるかを知ってそうな王政がもし本当に巨人を持っていれば…エレンはそいつに食われるだろう。」
今調査兵団が実行している作戦はエレンは唯一無二の存在であり王政は、エレンには手が出せないだろうという予想の元に組まれている。
だが、エレンの存在が“器”であるという仮説が真実だとすれば、このままでいいはすがない。
「……私はそう思ったんだけど、どうする?今ならリーブス商会の協力があるから奪還しやすいはず…」
ハンジは一旦作戦を取り下げる提案をしたが、エルヴィンは“賛成”といった顔ではない。
机から一通の封書を取り出すと、ハンジに手渡した。
「これは?」
「昨日届いた、レイス卿領地潜入班の報告書だ。ちなみにウォール教だが…やはりニック司祭が残した情報以上のものは望めそうにない。だが、この調査では生前に彼の言った“強固な誓約制度”との関連性を感じる。君の言うその話ともだ。何か関係してる気がしてならない…」
「えぇ…?」
ハンジは急いで封筒をあけると、中の報告書を食い入るように読み始めた。
「壁の巨人の謎を守るための“強固な誓約制度”というものが血族による信頼関係を根拠にしているのであれば、正式な婚姻手続きもなくレイス家との信頼関係が皆無などころか取り巻きに命を奪われかけた妾の子ヒストリア・レイス。その子がなぜ未だに謎の継承権を持つ者とされエレンと同様に王政から身柄を狙われているのか?」
「あぁ…おかしな話だ。これを全部読めば謎が解けるっての?」
ハンジは続きを読もうとしたのだが、エルヴィンの部下が慌てた様子で入ってきた。