第62章 レイス家の真実
そんな姿を見たエルヴィンは冷静な表情で水の入ったグラスをハンジに手渡すと問いかける。
「結論から聞こう。問題はなんだ?」
受け取ったグラスの水を一口煽ると、ハンジは尻もちをついたまま視線をエルヴィンに向けた。
「はぁ…はぁ…レイスは、エレンを食う気だ…」
「………!?」
ただ事ではないと判断したエルヴィンはハンジを立たせると、そのまま手を引きイスに座らせる。
少し呼吸が整うと、ハンジはエレンのメモに書いてあった事を一通り順を追って話し、自身の頭の中に閃いた仮説をエルヴィンに説明をし始めた。
ユミルが60年も壁の外をさまよっていたという言葉から、知性を持たない巨人も元は人間であった可能性が高いと思われる。
ラガコ村の住民が突如巨人化した経緯まではまだ解明できないが、少なくとも、壁外にはびこる巨人の中身は人間だという事がユミルとベルトルトの会話で断言できる。
「彼らはやはり望んで裸になって人を食べ歩いてるわけではなかったんだ…そんな不憫な所があのかわいさの1つでもあったんだろうな。とはいえ、人類を脅かす存在には変わりないけど…」
「エレンの記憶ではユミルのこの言葉が最初か?」
「そう…その会話から推測するにユミルはベルトルトやライナー、アニの仲間を食べたんだと思う。でもただの巨人が人間を食べただけでは元の姿になんて戻れない。それは我々がよく知っている。しかし、ライナー達の仲間であれば、それは巨人化の能力を有した人間だと思われる。つまり、“巨人にされた人間”が“巨人化の能力を有した人間”を食べると人間に戻る。正確には食った相手の“巨人化をコントロールする力”を手に入れるんだ。」
「…………」
「まぁ、突拍子の無い仮説だとは思ってるけど…エレンをライナーたちから奪還したときの報告書を思い出したんだ。今まで必死に奪おうとしたエレンに向かってライナーは巨人を投げつけたんだ。おかしいだろ?でも今の仮説が通るなら、ライナーはエレンを他の巨人に食べさせようとしたのかもしれない。巨人化の能力が食った相手から継承されるのであれば…彼らが求めるエレンの“叫び”の力もそれと同様かもしれない。」