第62章 レイス家の真実
クレアの背中を見送り、リヴァイも104期と入れ替わるようにダスゲニーを蹄洗場まで連れて行く。
そしてカッポカッポと蹄の音を聞きながらリヴァイは考える。
このクソみたいな状況をいち早く何とかしなくてはならない。そして時間もない。
ヒストリアの性格上、手っ取り早く承諾させるにはあの方法しか思い浮かばなかった。
誰かにやらせるくらいなら自分がやる。
そう思って買って出た役だったが、ニファ達はともかく、やはり104期の新兵にはすぐに理解できるモノではなかった。
あんな反応は想定内のはずだったが、実際にジャンやコニーの視線に触れてしまうと、いささか複雑な気持ちになった。
別に傷ついたとか寂しさを感じたわけではない。
だがなんとも言葉にしがたいモヤモヤが鬱陶しく胸の奥で引っかかっていた。
そこで自分の気持ちを見透かしたようにクレアがかけてくれた言葉。
クレア本人も戸惑っていたが、言いたい事は十分に理解できた。
この胸の奥で引っかかってるモヤモヤをどうにかしたくて、そして、自分に対しての想いも理解したくて出てきた言葉だったのだろう。
自分の容姿や男の視線には無自覚鈍感奇行種のクレアだが、こういう時の鋭さにはいつも驚かされる。
不器用ながらも懸命に伝えてくれたクレアの気持ちが嬉しかった。
昂ぶる気持ちに身を任せて抱きしめたくなってしまったが、ちょうど104期のメンバーがやってきてしまった。
グッとこらえてクレアに準備をしに行けと命令してしまったが、不思議と胸のつかえが取れていた事に気づく。
「……………」
クレアの言葉が胸の中を突き抜けると同時に、引っかかっていたモヤモヤも一緒に吹き飛ばしてくれた様な感覚だ。
風通しの良くなった胸は、少しばかりネガティブになっていたリヴァイの気持ちを奮い立たせた。
クレアのおかげでいつもの自分を取り戻したリヴァイはダスゲニーの馬装をしながら口角を上げる。