第62章 レイス家の真実
ヒストリアにした事を…そしてジャン達から向けられたあの視線を…気にしていたのだろうか。
人類最強の兵士長といえど1人の人間だ。
この世界の運命を調査兵団が勝ち取るに必要な行動であった事は理解している。
そして、なかば強制的に女王になる事になってしまったヒストリアの胸のうちは計り知れない事もクレアは理解していた。
どっちの肩をもつとかそんな事ではない。
皆が皆、苦しい状況で戦っているのだ。
リヴァイとてあんなやり方をしたかったわけではないが、我々には本当に時間がない。悩んでる時間などないのだ。
誰かがあぁするしかなかった。
その役をリヴァイが買って出ただけなのだ。
少し戸惑ってる様にも見えるリヴァイの三白眼。
クレアは見ていられなくて思わず駆け寄るとその手を取って両手で握った。
「クレア?!」
「兵長…あの私…上手く言えないんですけど…」
「……なんだ?」
「兵長の判断を……心から信じていますから…それに104期のみんなだって……きっと…」
「……?!」
少し驚いた表情と目が合った。
自分でもなんだか的外れな事を言ってしまった自覚はあるが、でも今言える精一杯の言葉がこれだった。
ヒストリアもジャン達も今はリヴァイに対して理解しきれない所があるかもしれない。
それでも自分はリヴァイの判断を信じている。
そして皆も必ず分かってくれるはずだと、心の中で強く念じた。
自分の想いは伝わっただろうか…
そんな気持ちでドキドキと胸を高鳴らせながらリヴァイの顔を見たのだが、リヴァイが何かを言いかけた所で厩舎の外が急に騒がしくなった。
声からして104期のメンバーだ。
出発の準備を終えてここまで来たのだろう。
「…言いたい事は伝わった…だから、もう行け。」
「は、はい……」
今こんな所を見られるのはまずい。
そう思ったクレアは、リヴァイの命令通り、デイジーのいる馬房まで走って行った。