第62章 レイス家の真実
「はい、そうです。何故ロッド・レイスが市井の人々を見捨て、壁外への進出を拒み…技術の発展を阻止するのか…我々は知る必要があります。そして我々が勝ち取るべき目標とは、現体制の変換に他なりません。民衆の前で仮初めの王から新の女王に王冠をゆずってもらいます。これまでの体制は嘘であると…民衆の前で認めさせ…そこに新たな光を見せなければなりません。そこまで整ってようやく我々はウォール・マリアにぽっかり空いた穴を“塞ごうとする”事が…できるのです。」
二ファの話はここまでだった。
人類のためにウォール・マリアを塞ぐには、まず王の首をすげ替えるというとんでもないクーデターを成功させてからではならない事がここではっきりとなった。
冗談抜きで人同士の争いに勝たなければ、ウォール・マリアを塞ぎに行くこともできない。
「聞いたかガキ共…時間がねぇ、さっさと準備しろ。」
「……………」
色々と腑に落ちない事がありながらも、104期は黙ったまま作戦準備へと取り掛かった。
───────────────
作戦決行のため、それぞれがそれぞれの準備で関所の中は急に慌ただしくなった。
クレアも髪を結び、医療道具の残量をチェックしてカバンに詰めると急ぎ足で厩舎へと向かう。
すると、シンと静かな厩舎の馬房の前にリヴァイが無口を持ちながらダスゲニーの額を撫でていた。
「…………」
何も言わず、何処を見つめているかも分からず、優しい手つきで撫でていた。
声をかけない方がいいのだろうかと迷っていたクレアだったが、ダスゲニーが先に気づいてしまった様だ。
ブンルと鼻を鳴らすと、リヴァイの袖を引っ張ってクレアの方を向かせてしまった。
「クレア…」
「兵長……」
いつもと同じ顔をしているが、その瞳の奥にほんの少し、曇りを感じたのは気のせいだろうか。