第62章 レイス家の真実
自分1人の力でどうにかできる程の頭も体力もない。
ヒストリアは必死に呼吸を整えると消え入るような声で、だがはっきりと言った。
「わ、わ、私の…次の役は女王ですね…?やります…任せて下さい……」
自ら率先してやりたいという底無しの正義感など、今の自分にはどこを探してもない。
だが、運命とは、宿命とは、考える時間も与えてはくれぬ様だ。
ヒストリアは腹を括るしかなかった。
「……よし、立て。頼んだぞ、ヒストリア…」
「はい……」
ヒストリアは応と返事を返したが、ジャン、サシャ、コニーの表情が険しい。
ヒストリアがイエスと言った以上口は出せぬが、リヴァイの行動に疑問が生まれたのは確かだ。
自身に向けられる不信感に気づかなかったわけでは無いが、今はそんな問答をしている暇はない。
リヴァイは二ファに続けるよう命じる。
「二ファ、話を進めてくれ。」
「はい…では団長からの作戦命令を伝えます。」
そう言うと二ファはエルヴィンからの伝達がびっしりと書かれた紙を取り出すと、作戦内容を話し始めた。
「作戦は本日…リーブス商会から第一中央憲兵へのエレンとヒストリアの引き渡しの日とされている本日に決行されます。第一憲兵はエレンとヒストリアの移動ルートから停留施設の選定までリーブスは商会に託してきてます。これを利用しない手はありません。我々はエレンとヒストリアをこのまま第一憲兵に引き渡します。そしてリーブス商会を通じてその終着点まで尾行するのです。その終着点とは彼を意味します。」
そこで二ファが取り出したのは、立派なハットを被った男の絵だった。
「ロッド・レイス。ヒストリアの実父にして…この壁の中の実質的最高権力者です。捕らえた第一憲兵によれば、上級役人からフリッツ王家まで全て彼の指揮下にあるようです。」
「ほう…そいつの身柄を調査兵団で確保して…無理矢理にでも対話を実現させようって事か?」