第62章 レイス家の真実
「お前らも数々見てきたあれが…明日からじゃない根拠はどこにもねぇんだからな。しかしだ、こんな毎日を早いとこ何とかしてぇのに…それを邪魔してくる奴がいる。俺はそんな奴らを皆殺しにする異常者の役を買って出てもいい。そりゃ顔面の形を変えてやるくらいの事はしなくちゃな。俺なら巨人に食われる地獄より人が殺し合う地獄を選ぶ。少なくとも…人類全員が参加する必要は無いからな……」
人が巨人に食われる無惨な光景は皆嫌というほど見てきた。
調査兵団に入団して間もない104期ですらそうだ。
それをどうにかしようとしているのに、何故だか人間の手が自分らの行動を邪魔してきている。
その手を排除しなければならないのは分かっている。
リヴァイの話も理解できないわけではない。
だが、巨人を討伐するために入団した調査兵団で、人間同士の戦いをしなくてはならないなど、104期の新兵達はすぐに頭を切り替える事などできなかった。
「だがそれさえも…俺達がこの世界の実権を握る事ができての話だ。そうなれば死ぬ予定だった奴がだいぶ死ななくて済むらしい…結構な事じゃねぇか…それもこれも全てお前次第だヒストリア。」
「……え?」
「従うか…戦うか…どっちでもいいから選べ…」
「…リヴァイ…兵長…」
再び自分に話題を振られ、肩が震えてしまうヒストリア。
蛇に睨まれた蛙の様に身体が強張り、声さえも思う様に出せない。
「……ただし……」
やめて…
何度聞かれてもそんな重要な事、自分で決められるはずなど無い。
冷や汗を流しながら声無き叫び声を上げるヒストリアだったが、リヴァイはそんなヒストリアの前にしゃがみ込むと、この建物が揺れてしまうのではないかと思えるほどの声で怒鳴った。
「時間がねぇから今すぐ決めろ!!!!」
「やります!!!」
「はぁ…はぁ…はぁ……」
“やります”
この言葉が反射的に出たのか自分の意志なのかは分からない。
だが、逃げる選択をした所でどうせリヴァイ達に捕まるか、自分を狙ってる中央憲兵に捕まるかのどちらかだ。