第62章 レイス家の真実
「な……?!」
「信じていたのに!!!」
「……まさか…お前……」
サネスの痛々しくも感じる言葉に一抹の不安がよぎったラルフだが、首を締められていて上手く声がだせない。
「サネス!!」
すると、見かねたハンジが2人のやり取りに割って入った。
「彼は何も話していない!っていうか何もしてないし何の質問もしていないんだ。」
「!?」
「ラルフは君が別の場所にいると知らされていた。そしてナイフで脅され私の作った作文を声に出して読んだ。…それだけだ。」
「…なん…だって……」
ハンジがポケットから紙きれをだしてピラリと広げると、そこには台本の様な会話文がびっしりと書かれている。
目を凝らすと、紙の中央あたりに“暑苦しい奴”という文字がはっきりと見えた。
「……………」
予想だにしなかった真実に、サネスは脱力しその場で崩れ落ちてしまう。
「ゲホッ!ゲホッ!ゴホッ!!!」
ラルフはそのまま後ろのベッドに倒れ込んで、必死に酸素を求めて咳き込むが、今のハンジの言葉で何が起こっていたのか理解はできたようだ。
「クソッ…じゃあ…俺が王を裏切ったのかよ……」
「「……あ、悪魔め…!!!」」
2人は声を揃えてハンジに力無くそう言い放った。
「…そりゃ、否定はしないけど。ニックにもあんたらがそう見えただろうね。」
ハンジは静かに答えながらゴーグルを額まで上げると、牢の柵を掴んで顔を近づけ思い切り息を吸って腹のそこから叫ぶ。
「だからあの時言っただろ?あんたらがかわいそうだって。本ッ……当に惨めだよ…おっさんが泣いて…喚いてみっともない!!ざまぁみろ!!ばーーーーーーか!!」
「ハンジさん……」
ニックの仇をとるまで必死に怒りを我慢していたのだろう。心の底からの叫びを聞いたクレアは、ハンジの気持ちが痛い程に理解できてしまい握る拳に力が入ってしまった。