第62章 レイス家の真実
いくらエルヴィンから聞いていたにしても、リヴァイもハンジもえらく冷静すぎやしないか?
15歳の、しかもついこの間訓練兵団を卒業してきたばかりの女の子だ。
いくらなんでも“クーデター”の次元を超えているのではないかと、そんな言葉が口から出かかったが、クレアはすんでの所で飲み込んだ。
“残された道はこれしかない”
たった今ハンジの言った事を思い出しクレアは口をつぐんだ。
王や王政が守りたいモノは人類ではなく、彼らの庭付きの家と地位だけ。
むしろ自分達の権利が脅かされるのならばその相手が巨人でなく人間であっても区別なく排除する。
信じがたいが昔も今も、王政とはそんな人間の集まりだったらしい。
王政からすれば、死んでも構わない人間の数が多すぎる。
そんな王政に、エレンもヒストリアも託してはならないのだ。
改めて今自分達がしている事の重大さを理解すると、クレアは黙って頷いた。
「そしたらニファ、頼んたぞ……」
「承知致しました!」
敬礼をしたニファはサネスの話した記録を胸ポケットにしまうと、大急ぎで厩舎に向かっていった。
「クレア、疲れたでしょ?少し休んできていいよ?」
「え?!」
「サネスになんか酷い事言われなかった?拷問なんて…やりたくなかったでしょ?」
「ハンジさん……」
そう言ってニコリと微笑むと、優しくクレアの頭を撫でるハンジ。
ハンジだってリヴァイだってやりたくてやったわけではないのは自分と同じだ。クレアはそんなハンジの優しさに触れると、自分だけ甘えるわけにはいかないと首を振った。
「私は大丈夫です!!」
こうしている間にも、今自分にできる事は何かないだろうか。
そんな事を考えていたらある事が閃いた。
「あ、あの!私、やりたい事があるので失礼します。」
「クレア…?!」
ハンジは首を傾げていたが、急がなくてはとクレアはその場から走って行ってしまった。