第62章 レイス家の真実
「(…………)」
「(…………)」
「…!?」
この部屋の外から聞こえてくるのはよく知る仲間、ラルフの声だ。
ラルフ…お前まで捕まっていたのか…!なんて事だ…
このままではラルフも自分と同じ目に遭ってしまうとサネスは仲間の身を案じのだが…
「(ほら行け…グズグズするな、情けない奴だな…爪1枚で全部喋りやがって…)」
「……!?」
「(サネスの手の爪はもう残ってねぇんだぞ、だがヤツは喋らねぇ…お前とは大違いだ。)」
「(知るかよ、そりゃあいつの勝手だ。さっさと死んじまえばいいんだよ。王だの平和だの暑苦しい奴で俺は迷惑していたんだ。あんた達で奴を殺してくれよ…)」
「(お前らの証言と一致するか確かめるまではダメだ。)」
「(もう俺のゲロした事で当たってんのにぬかりねぇな。なぁ俺の牢にはベッドはあるのか?)」
「(安心しろ…飯も2食出してやる。サネスが吐けば相部屋にしてやる。)」
そこまで聞き取ると、足音と共にラルフの声は聞こえなくなった。
「ラルフの奴…俺を裏切ってやがったな…いったいいつからだ、クソッ!!」
ずっと相棒としてどんな汚い仕事も共に乗り越えてきた筈のラルフ。
王のために、志高くその手を汚し続けてきた同士だった筈のラルフ。
そのラルフが爪1枚で全て喋ってしまった。
それだけてはなく自分を“暑苦しい”と罵るというオマケ付きだ。
今まで王政に仕えてきた忠誠心に、仲間を心から信じていた信頼感が一気に崩れ落ちる音が聞こえたような気がしたサネス。
その瞳から光が完全に消えた。
「……貴方とラルフさんの間にはかなりの温度差があった様ですね…」
「……何が言いてぇ?」
「先程“嬲り殺しにしてくれ”と仰ってましたが、今リヴァイ兵長の申していた通り、双方の証言が一致しない限り、貴方を殺す事はできません。ほんのわずかな時間ですが、痛みを止めて差し上げますので…ご自身でよく考えて見て下さい。」
そう言うと、クレアは慣れた手付きでサネスの腕に、弱い麻酔薬を注射してやった。