第62章 レイス家の真実
「グハァッ!!や、やめろぉ!!!」
「…しっかり消毒しておかないといけない旨は、たった今申し上げたてはありませんか?それと、口の中もちゃんと洗浄して下さい。喋れなくなったら困りますので…」
「ふ、ふざけるな…!」
指先の激痛でガタガタ腕を震わせながら怒りの言葉を口にしたが、クレアは聞こえないフリをして吸い飲み器にアルコールを入れると、その口に押し込んで容器を傾けた。
「ゴフッ!!カハッ!!カハッ!」
高濃度のアルコールが鼻を刺激して折れた部分に激痛を与える。
また口内に流れ込んできたアルコールも、無理矢理抜歯をされて流血した歯茎に染み込み、顎が砕けるような痛烈な痛みが走る。
何度も咳き込み、むせ上げ、血の混じった液体を辺りに撒き散らしながらサネスはゼェゼェと息を上げてしまった。
「なんなんだよ…お前は……」
ハンジとは違い、真顔で淡々と強烈な痛みぶち込んでくるクレアを見てサネスは疑問を投げかけた。
「何…とは…私の名前ですか?以前、調査兵団の施設内でお会いした時に伝えていたと思うのですが…私は102期で入団したクレア・トートです。ハンジ班に所属しておりますが、階級はありません。」
「そんな事を聞いているんじゃない…拷問を始める前に爪を剥がして殴り飛ばしたあの2人といい、治療とかこつけて傷口にアルコールぶちまけるお前といい、お前ら普通じゃねぇよ…拷問が好きなイカれた奴にしか見えねぇよ!!」
「…………」
自分が今まで他の人間にしてきた事を棚に上げて何を言うのだこの男は。
クレアが呆れて返す言葉を探していると、部屋の外から声が聞こえてくる。
きっとハンジ達が第2の作戦に出たのだろう。
クレアが閉じきらずに少し隙間のあいている扉の方を見ると、サネスもつられるように同じ方向を見た。
そして何やら外から聞こえてくる話し声に耳を傾けた。