第9章 駈けだす想い
「壁外調査を前に怖気づいたか?お前らみてぇなクソ兵士は必要ねぇ。とっとと開拓地にでも行きやがれ!」
ザズとリゲルは逃げだそうと試みるが、ここは倉庫。出入り口は1つしかなく、そのたった1つの出入り口は今現在リヴァイによって塞がれている。
2人に退路はなさそうだ。
「まずはその汚ぇ手をどけろ!」
リヴァイは入り口に立ててあった調教用の長鞭(ちょうべん)を手に取ると、語気を強めてにじり寄る。
右手で柄を握り、左手で鞭の先端をつまみ弓なりにすると、リゲルの手に狙いを定め、睨みつける。
──スパンッ!──
思い切り鞭を振るうと、リゲルの手元に当たり、ナイフがコツンと落っこちた。
「うっ……!」
痛みに耐えかね前かがみになったところで、すかさず鞭を逆手に持ちかえ、硬い柄の部分で思い切りみぞおちを突くと、あっけなくリゲルはうめき声を上げながら気を失ってしまった。
横で青ざめているザズにも容赦はしない。
ザズは膝立ちになって、クレアのベルトに手をかけていた。このままズボンを脱がせて押さえつけ、無理矢理後背位でコトに及ぶつもりだったのだろう。
考えただけで虫唾が走る。
「おいお前、蹴りやすい位置にいてくれて助かった。」
「ひっ………」
──ドガッ!──
ザズには渾身の回し蹴りで失神をさせた。
リヴァイは電光石火の如く2人の新兵を叩きのめすと、すぐにクレアにかけよる。
「おい、大丈夫か!?」
無言でムクリと起き上がったクレアの口元と胸には2人の精液と地面の砂がつきベタベタになっていた。
上半身は裸にされてしまっていたため、リヴァイはすぐに自身のジャケットをかけてやると、大きな外傷がないか確認をした。
「ちょっと待ってろ……」
リヴァイは水道でハンカチを濡らして絞ると、クレアの口元と胸元を丁寧に拭きとっていく。
「遅くなってすまなかった…怖かっただろ。」
まさかの優しい言葉に、クレアはポロポロと涙をこぼし始めた。
「も、申し訳ございません…ハンジさんからも、兵長からも……忠告は受けていたのに……」
いちど溢れ出してしまった涙はなかなか止まってはくれなかった。