第62章 レイス家の真実
「………」
どれだけサネスが叫ぼうとハンジは爪を剥ぐ事をやめない。
サネスの叫び声でこの部屋はうるさいはずなのに、ペンチで挟まれた爪が引っ張られ、ミシミシと軋み、なんとも形容しがたい鈍い音をたてて爪が肉体から剥がれていく様子は何故だかはっきりと耳に入ってくる。
目をそらすなと言ってるのだろうか。
どこの誰かは分からないが、自分もこの拷問の当事者なのだと、それを忘れるなと言ってるのだろうか。
もう手を汚す覚悟ならさっきした。
今更迷いなどあるものか。
そう心の中で呟くと、クレアは奥歯を噛みながらかぶりを振った。
そして両手の爪を剥がし終えると、今度はリヴァイが思い切り殴りつける。
モブリットがイスの背を抑えてるため、殴られた力に合わせて身体を曲げる事ができず、全ての衝撃をその顔面で吸収した結果、一瞬首が変な方向に曲がってしまった。
「…ニックが受けたメニューってのはこんな所か?」
腫れ上がり、鼻や口から血を流しているサネスを見てリヴァイがハンジに問いかける。
「うん…そうだね…」
どうやら2人は、ニックが受けたであろう苦痛をサネスに与えてから拷問を始めるつもりだったらしい。
「サネス、見てくれ。いや〜なかなか難しかったよ。やってるうちにコツを掴めてきたんだけど…ごめん…サネス程うまくは剥がせなくて…いったい何枚剥がせばあんなに上手くなれるの?」
“上手い爪の剥がし方”なんて、おかしな言葉だが、確かにハンジの剥がした爪は、欠けていたり、余計な肉がついていたりと不揃いで上手い剥がし方とは言いがたい。
爪をきれいに剥がすにもそれなりの熟練度が必要の様だ。
となるとこの目の前で顔面から血を流している男はどれだけの人間の爪を剥がしてきたのだろうか。
ハンジが疑問をぶつけると、サネスはため息をつきながら答えた。