第62章 レイス家の真実
自分はハンジ班の班員なのだ。
いざとなった時、手を汚す事を絶対に躊躇ってはならない。
エルヴィンの伝言に、この目の前に並べられた道具を見つめながらクレアは静かに覚悟を決めた。
「そしたら…あとは掃除の再チェックをした方がよさそうね…」
ハンジはともかく、モブリットも一緒だったのだ。
リヴァイが来る事を考え、きちんと掃除を済ませているはずだが、万が一があっては大変だ。
クレアは掃除道具を見つけると、リヴァイが気にしそうな場所から順番に点検を始めていった。
あれこれと掃除の手直しをしていたらもうとっくに昼が過ぎていた。
104期の様子を見に行くと、廊下や個室にロープを張って洗濯物を干している。
もうすぐ終わるだろう。
クレアはキッチンへ行くと、食材は乾燥したパンに根菜類、芋、それとわずかな調味料だけだった。
「お昼は簡単にスープでも作っちゃおう。」
スープなら多めに作っておけば夜にもまわせる。クレアは手を洗い、腕まくりをすると大きな寸胴にお湯を沸かして大急ぎで野菜を切り調理を始めた。
そして30分もすればグツグツと鍋は湯気を上げながら
いい香りでキッチンを満たしてくれる。
「あ、あの!!クレアさん!?」
すると、いち早くこの香りに気付き飛んできたのは、もはや説明もいらないだろう。
勢い良くキッチンに入ってきたのはサシャだった。
「あら…やっぱりサシャが1番早く気づいたのね?凄い嗅覚。」
「なんですかこのいい香りは!!クレアさんが作ったんですか?とってもいい匂いがします!!私、もう…お腹ペコペコなんです!!」
「ふふ、ただの野菜スープだよ?それより、洗濯物は終わった?」
「はい!!終わりました!!」
「そしたらみんなを呼んできて。ハンジさん達はいつ戻ってくるかわからないから、先に済ませちゃいましょう。」
そう言うと、サシャは背筋を伸ばし、クレアに敬礼をすると、皆を呼びに大急ぎでキッチンを出ていった。