第62章 レイス家の真実
ひとまず建物の確認だ。
リビングにキッチン、狭い個室が何室かある。
地下には牢が。
そして1階の1番大きな扉をあけると窓はなく真っ暗だった。
だだっ広い部屋には家具の類はなく、真ん中に肘掛け付きのイスが1つ。
ロープが数束。
そして木製の2段ラックには様々な器具が並べられていた。
「………」
様々な種類のペンチ、大小の釘、トンカチ…
きっとこれを使って拷問をするのだろう。
なんとなく使い方が想像できる物からまったく使用方法の分からない物までいくつもあった。
「……?なんだろこれ……」
そして木製ラックの下に無造作に置いてある布袋が目に入る。
おもむろに手に取ってみると中身はアルコールに縫合針、糸、止血剤、麻酔薬。
そしてリヴァイが用意させたのだろう。
ゴム製の長いエプロンと、肘までのゴム手袋が入っていた。
ある程度の拷問をしても吐かないようなら一旦自分に応急処置をさせて、生かさず殺さずの匙加減で何がなんでも喋らせるつもりの様だ。
しかも麻酔は手術で使う様な種類ではなく、すぐに効果の切れるいちばん弱い物だった。
全てにおいて痛みを伴う段取りが組まれている事にゾッとしたが、今しているのは巨人退治ではない。
エルヴィンの伝言にも書いてあった。
王は、エレンとヒストリアを手に入れるためならなりふり構わず権力を行使し、住民や壁の保全などまるで意に介していないのだ。
このまま王の暴走を許す事はできない。
そしてこのまま訳のわからぬまま人類滅亡の日を迎えるわけにはいかない。
王政を打倒し、我々がこの壁に残された人類全ての実験を握る。
この手段こそが人類が生き残るための唯一の方法なのだと。
そのためにも、レイス家の秘密を手に入れなければ自分達は終わりだ。
もう、後戻りのできないクーデター。
失敗すれば死。
だが王政がエレンとヒストリアを狙っている以上、何もしなくても死はすぐそこまで迫ってきている。
生きていたければ戦わなくてはならない。
そこに甘えたきれい事は通じない。