第61章 104期との距離
当然だが時間になればリヴァイにも見張り当番が回ってくる。
「……寝るか。」
リヴァイは寝る前に顔でも洗おうとキッチンの方へと向かうと、真っ暗なキッチンから水を流す音が聞こえてくる。
まだ誰か起きてるのだろうか。
リヴァイは蝋燭に火のついたランプを片手に扉を開けると、そこにいたのはクレアだった。
「クレア…?何をしている。」
「あっ…兵長……」
よく見るとクレアはシンクに頭を突っ込んで顔や髪を洗っていた。
狭いシンクで無理矢理洗おうとしたせいか、上半身に着ている服がびしょ濡れだ。
いったい何をやってるんだと思ったリヴァイだったが、クレアの今にも泣き出しそうな顔を見ると、その理由が分かってしまった。
「かせ、手伝ってやる……」
「あっ、兵長……」
「あの男に触られた所が気持ち悪いんだろ?ここは風呂がねぇからな…後ろは俺がやってやる。」
そう言ったリヴァイはクレアの持っていたタオルをひったくる様に取り上げると、絞り直してあの男が舐め回していたうなじのあたりを丁寧に拭いてやった。
「ご、ごめんなさい……」
「?…何についての謝罪だ…」
「わ、私が自分からヒストリアの替え玉に立候補したくせに…こんな事してるなんて…おかしいですよね…すみません……」
「そんな事はない。いくら作戦を成功させるためとはいえ、あんな汚ぇ男に舐め回されるなんて嫌に決まってるだろ?見ていた俺も、一瞬作戦を忘れちまいそうになったくらいだ…お前はよく耐えた。そのおかげで作戦は成功して、こうしてリーブス商会とも手を組む事ができたんだ。お前の言った通り、アルミンが替え玉では成功しなかっただろう。クレアはよくやった……だからもう、強がらなくていい…」
優しい手つきでクレアのうなじを拭き取りながら今日の事を労うリヴァイ。
気づけばクレアの両目からは涙が流れていた。