第61章 104期との距離
「……?」
目の前にいる自分よりも若い男が言っている事は事実だ。
自身が率いるリーブス商会が、この街の住民と仕事を繋ぎ、どうなりこうなり生き長らえているのだ。
だが、この期に及んでいったい何を言うつもりなのだろうか。
「しかしこのままではリーブス商会が消滅し、この街はとどめを刺され完全に機能しなくなる。その場合、路頭に迷うのはあんたの所の従業員だけではなくなる…兵士を除く街の住民全てがその対象だ。いったい何人が冬を越せるだろうな。確かに中央憲兵に殺される方がまだ楽かもしれん。」
「あぁ…そうなるだろうな…お前らがエレンとクリスタをよこさねぇせいで人がごまんと死ぬだろう…それで?俺の部下とこの街の住民を餓死させねぇためなら人類の奇跡をくれるってのか?」
「その通りだ。エレンとクリスタをお前らにやる。」
「は?」
「えぇ!?」
「リヴァイ兵長!!?」
リヴァイのとんでも発言にリーブス商会の会長であるリーブスは勿論、周りにいたクレアや104期も驚愕だ。
特にミカサの顔は驚愕通り越して薄っすらと殺意さえ感じるほどだ。
「兵長……」
リヴァイはイエス、ノーははっきりと言う人間だが、あまり人と交渉する様な姿は見た事がない。
昔は地下街で生きるか死ぬかの日々を送っていたと聞いていたため、どちらかというと力や結果で解決するタイプだとクレアは思っていた。
勿論、完全に冷徹漢なわけではないのもクレアは誰よりもよく知っている。
だからこそ、こんな風に一対一で話をする様な光景はとても珍しかった。
そんなリヴァイはエレンとクリスタをリーブス商会に委ねてどうするつもりなのだろうか。
リヴァイの口から語られる言葉に皆注目し、ピリリと緊張が走る。
「ただし、条件を3つ受け入れろ。1つ、リーブス商会は今後調査兵団の傘下に入り中央憲兵や王政、法に背く事とする。」