第61章 104期との距離
予想していた衝撃がこない事にクレアが振り向くと、小型の拳銃には真ん中から矢が刺さり、見事に真っ二つに割れていた。
「あ…サシャ……!!」
木箱の上に潜んでいたサシャが矢で射ってくれたため、間一髪2人は無事だった。
「お…おい!クレアさんとミカサに当たったらどうするんだ!!」
「ミカサが獲物から目を離すのがいけないんですよ!!」
「ジャ、ジャンごめん!私達は大丈夫よ。サシャもありがとう!助かった!!」
サシャは狩猟民族の出身のため、弓矢の技術やカンの鋭さがピカイチだ。
こうして今も間一髪の所で怪我を負わずに済んだ。
「お前がここの商会のボスだな?」
のびてる部下たちをひとまとめにすると、リヴァイが尋問を始めるが、当然の様にこの男はしらばっくれた。
「違う…違うんだ、俺は馬車の運送にコキ使われているただの老いぼれだ…だから…ひでぇ事はやめてくれよ旦那…俺は何にも知らねぇんだ…」
「………」
先程まで部下を引き連れて、“身ぐるみ剥がす所から始めるんだ”などと偉そうに言っていたくせにこの変わり様はいったい何なのだ。
だが、この男の口を割らなければ情報は手に入れる事ができない。
どうするのだろうか…
クレアが心配そうにリヴァイの方を見ると、ミカサの顔を見た男がバツが悪そうな声を漏らした。
「あ……」
「ん?……あぁ、あの時…扉を塞いでいた…」
「ミカサ、あの時とはなんだ…?」
「兵長、こいつです。トロスト区の外門が破壊された時にこの男の荷物が邪魔をして、一時的に避難が遅れていました。その時部下から会長と呼ばれていたので間違いありません…」
「チッ……」
お互いの記憶が一致したのか男は態度を豹変させ舌打ちをした。
「そうらしいな…会長、あんたの巣じゃ落ち着かねぇ…場所を変えよう。」
「しょうがねぇな…」
男は渋々了承した。