第61章 104期との距離
ジャンに背中を向け、自身の顔からも視線を外した今が好機。
クレアは感じるフリをしながら、おおきく仰け反ると、勢いに任せて男の額に頭突きを一発くらわした。
ーゴンッ!ー
「ぐぁぁぁぁ!!」
不意を突かれた男は、余りにもの激痛に叫び声を上げながら屈んでいた身体を起こすと、なんとも隙だらけだ。
「(今だ……!!)」
クレアは縄で縛られたまま立ち上がると、男のこめかみに狙いを定めて渾身の回し蹴りでとどめを刺した。
「ガハッ!!!」
見事にヒットした蹴りで、男は目を回しながら倒れ込む。
それと同時に力任せに蹴りを入れたクレアもそのまま床に倒れてしまった。
「いった……!!」
バランスを失ってイスごと倒れてしまうが、これは想定内。
「クレア!大丈夫か?!」
「すぐに切りますので動かないで下さいね…」
クレアの攻撃と同時に突入したリヴァイとミカサがすぐに中に入ってきて縄を切ってくれた。
「あ、ありがとう。」
「……それにしても、本当にこんな状態でヤッちまうなんて、大した奇行種だな…」
「い、以前ハンジさんから仕込まれました、“甘えん坊おねだり幼女設定”が役に立ちました…まさかこんな場面で使うとは思ってもみませんでしたが…」
「あんのクソメガネが…チッ、文句を言いてぇが時間が無い…アルミン!ロープ持ってこい!」
「は、はい!!」
外の見張りをしていた男2人を拘束し終えたアルミンは急いで中に入ってくると、涎を垂らしながら目を回している男の両手首を背部で固く縛った。
無事にこのアジトは制圧できたが、まだ終わりではない。リーブス商会のボスがこれからエレンとヒストリアを雇い主である中央第一憲兵の元まで連れていくのだ。
ここに戻ってくるまでそう時間はないだろう。
それまでにこの男達を見えない場所まで運ばなければならない。
「そしたらコイツらをあそこの物陰に移動させるぞ。急げ!!」
コニーとサシャも中に入ってくると、皆で急いで移動させ、次の作戦への準備へ取り掛かる。