第61章 104期との距離
「兵長…クレアさんが……」
「あぁ、分かっている…人数が把握できたならとっとと行くぞ。アルミンは拘束するロープを持ってついてこい。サシャとコニーはここで見張りだ。そして俺とミカサで入り口の2人をやる。いいな?分かったならサインを出せ…」
「は、はい…ですが…あのリヴァイ兵長…脚の調子はどうですか?」
「あ…?!」
いきなりなんの事だと眉間にシワを寄せたリヴァイだったが、ミカサのなんとも言えない気不味そうな表情を見てその言葉の意味を理解した。
ミカサは巨人化したアニと戦闘した時に自身を庇って脚を負傷してしまったリヴァイの事をずっと気にかけていたのだ。
「…あぁ、思ったより動く。悪くない…」
その返事にひとまず安堵をする。
そしてミカサは警戒しながら天窓を覗いて中の様子を探ると、運良くすぐにクレアと目が合わせる事ができた。
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背後から抱きつかれ、臭い息を吐きながらうなじを舐め回されているクレアは、ただただ苦痛でしかなかった。
父親と同じくらい年の離れた清潔感の欠片も感じられない男の手で触れられ、唾液のついた舌が自身の肌の上を這うなど、とてもじゃないが形容する言葉など出てこない程気持ちが悪い。
だがヒストリアの替え玉が、アルミンのままだったら、変装などすぐにバレてしまっただろう。
こんな状況でも、あの時無理にでも自分が立候補をしておいて本当に良かったとクレアは思った。
自分さえ我慢していれば必ずチャンスは訪れる。
そう信じて顔を歪ませたまま天井を仰ぐと、天窓から人影が見えた。
何度か見え隠れした後に姿を確認できたのはミカサだった。
「(ミカサ………)」
ミカサは、男がこちらに気づいていない事を確認すると、親指を立てた拳を左から右にスッと動かす。
「(……!!)」
これは、突撃の準備完了、そして攻撃許可の合図だ。