第61章 104期との距離
「あぁ…大丈夫だ。ここは任せてくれていい。外の見張りを頼む。」
見張りに2人が出て行くと、ここの見張りはこの男1人の様に思えるが、他にまだ仲間はいるのだろうか。
できたらボスが戻ってくるまでにここを制圧したいが、仲間が何人いるのか分からない。
クレアは焦る気持ちをグッと抑えておとなしくしていると、まさかの展開が自身を襲った。
「ねぇ…君、可愛いね…??」
「……?!」
こんな張り詰めた場所になんとも似つかわしくないセリフが聞こえてきて一瞬クレアの頭には疑問付が浮かんだが、聞き間違いではない事だとすぐに理解する。
「お人形さんみたいだね…ねぇ、触ってもいい?」
「……!!」
この男は正気か?
仲間の男が2人、外の見張りに出て行くと豹変した様にクレアの身体を触り始めた。
「……ひっ…」
背後から抱きつき、服の上から胸や顔にベタベタと触れては、気持ちの悪い息づかいを耳に押し付けてくる。
「なぁ…どうだ?気持ちいいかい?君はどんな声で鳴くのかな…?」
「……っ!!」
酒に酔っているわけではなさそうだがこの男の吐く息が臭くて目眩がする。
そんな男から身体を拘束された上に、いいように触られるなど気持ち悪い事この上ないが、ヒストリアの替え玉を立候補したのは自分なのだ。
奥歯を思い切り食いしばり我慢していると、真向かいに座っているジャンと目があった。
ダメだ…
自分がこんな顔をしていたら心配させてしまう。
クレアは気持ち悪いながらもニッと口角を上げて励ますと、オロオロとしていたジャンも、その気持ちを察してかグッと堪える様に真剣な眼差しで応えてみせた。
「ハァ…ハァ…ほら…早く聞かせてよ…かわい子ちゃんの声、聞きたいなぁ……」
クレアはブンブンと顔を振ってなんとか逃れようとするのだが、かえってこの男を煽ってしまった。