第61章 104期との距離
確かにトロスト区の壁際に住んでる民衆の生活は計り知れない。
だが、調査兵団だって同じだ。
毎回危険な壁外調査へ出て、ウォール・マリアの穴を塞ごうと努力をしているのに税収の配分が明らかにおかしい。
寄付を募り、ハンジの発明品を売って今まで日々食い繋いできたのだ。
この輩は調査兵団にも十分な税金が配分されていると完全に勘違いしている。
何か一言言い返したが、今は大事な作戦中だ。リヴァイの許可無しに勝手な行動はできない。
「なぁ、こんな街中をぶらぶら歩いてお買い物か?女連れて歩いていいご身分だよな。」
「あんたらに少しでも良心ってもんがあるのなら…金を置いていけよ…」
「調査兵団が余分に取りすぎちまった分をよ!」
「オイ!気をつけろ!!」
男達に囲まれてしまい動揺していたが、リヴァイの言葉で皆我に返る。
耳を澄ませば物凄いスピードで何かが近付いて来ている音がする。
クレアにも緊張が走った。
「は?何に気をつけるって?人類最強の兵士がよぉ!!!」
自分の話をまったく聞いてない態度に怒りが頂点に達したのか、2人がかりでリヴァイに掴みかかってきたが、まったくいい迷惑だ。
「よく見ろ!!馬車が突っ込んで来る!!!」
すぐそこまでやってきた馬車を二手に別れて避けると、荷台に乗っていた男がエレンとヒストリアに変装した2人を攫って行った。
ーガガガがガガガがガッ!!!ー
「あっ!!ジャ…じゃなくて、クリスタとエレンが!!また攫われてしまったぁぁ!!!」
うっかり口を滑らせてしまいそうになったが、サシャのセリフはちゃんと届いただろう。
「お、おい……」
「あんたら……」
この状況がまったく分からない男達はオロオロしながらリヴァイ達を見るが、そんなのに構っている暇はない。
「お前ら、一定の距離を保って立体機動で追跡だ。絶対に見失うな、急ぐぞ!!」
「は、はい!!」
リヴァイ達は2人を攫った奴らのアジトを突きとめるため、絡んできた男達をスルーすると、立体機動を使って追跡を始めた。