第61章 104期との距離
「おい、ボーッとしてる暇があったら脚を動かせ、もういつ奴らが仕掛けてくるか分からねぇんだ。もっと周りにも目を光らせろ。」
「は、はい……」
エレンとヒストリアをずっと狙っていたなら敵はもうすぐ背後まで来ているはずだ。
リヴァイは全員に喝を入れると、先導する様に歩いていたのだが、思いもよらぬ人物から声をかけられた。
「オイ…あんた、リヴァイじゃねぇか?」
「あ?」
「本当だ!俺も見たことあるぞ!」
「人類最強の兵士リヴァイだ!」
「オイオイ小せぇな…」
「馬に乗ってる所しか見た事なかったが…こりゃあ…」
街の民衆がリヴァイの顔をみるなりわらわらと集まってきてしまった。
「……邪魔たが」
「まぁ聞いて下さい兵士長!みじめな俺達の話を…」
「お前ら兵士が大袈裟に騒いだ避難作戦のせいで職にあぶれちまったんだよ。」
「俺らだけじゃねぇ、ここ壁際の街には度重なる不信感で人がよりつかねぇ、とにかく儲けがねぇし食えねぇ。」
「どっかにいっちまった駐屯兵の代わりにコソ泥がわんさか入ってきやがった。なのに税は高ぇままで…俺達にどうしろって言うんでしょうか?」
超大型巨人の再来に、先日のローゼ突破疑惑。
人々は混乱し、トロスト区内でも壁際は特に人が寄り付かなくなったのは事実だ。
ここに住む者にとって生活は苦しいなんて言葉ではとても言い表せないだろう。
「どうしてこうなった?なぜ巨人に何回も攻め込まれてるんです?俺には分かる…あんたら調査兵団の働きが足りねぇからだ…」
そして、話の矛先はどんどんと調査兵団への恨みへと変わっていき気づけば全員この街の男達に囲まれてしまった。
「俺のやってた商売はこうだ…稼げねぇのは自分が悪い。労働に対価が見合わねぇなんていつもの事。だがあんたらは違うでしょ?働きが足りねぇしけっかが出てねぇのに食えてる…」
「…………!!」
エスカレートしていく勝手な言い分にクレアは段々と苛々してきてしまった。