第61章 104期との距離
「兵長…?」
「お前の心を信じていないわけではない。ちゃんと俺に対する想いは信じている。だが、俺は調査兵団の兵士長だ。何度か無茶をしてお前を助けた事もあったが、それはいつでもしてやれるわけじゃない。だから俺ができる事は普段からお前の笑顔につられてやってくる男共に睨みをきかせる事くらいだ…自分の立場が邪魔をしてお前から目を離している隙にどっかの誰かに攫われでもしたら俺はもう……」
言葉を詰まらせてしまったリヴァイに、クレアの胸は思わずズキンと痛んでしまった。
リヴァイの独占欲や警戒心が、少し過保護ではないかと思っていたクレアだったが、今のリヴァイの言葉を聞くと、何も反論できない。
確かにリヴァイの独占欲は強い。
近づいてくる男には睨みをきかし、団長であるエルヴィンですらお構いなしだ。
だが、その裏に隠された本当の意味。
何が何でも自分を失いたくないという強い想い。
リヴァイのあの怖いくらいに思えた警戒心や睨みは、そんな想いの現れだったのだ。
「ご、ごめんなさい…あの…私…兵長のそんな想いも知らずになんて事を…」
「だから無自覚で鈍感なんだよ…これでわかったか?」
そう言うと、クレアの額を軽く小突いたリヴァイ。
どうやら怒ってはいない様だ。
「わ、分かりました…ですが、104期のみんなにはもう少し優しくしてあげて下さい。もうカミングアウトもしてしまいましたし、誰も私に何かしようなど考えませんので…」
「ほう…その根拠はなんだよ?」
「根拠…ですか…?えと…普通に考えて、上官の恋人に手を出す事はないかと…それにあの104期の男の子に限ってそんな事、リヴァイ兵長を尊敬しているのにできるはずがありません…」
「…………」
確かに、エレンもジャンもコニーも、自分を裏切って手を出す真似ができそうな性格ではなさそうだ。
なんとなく納得のいったリヴァイはため息をつくと、そのままゴロンとクレアの隣に横になった。