第61章 104期との距離
「あ、う、うん!!2枚ずつくらい入れると香りがよくなるかも!!」
サシャの一言で、キッチンへきた目的を全員が思い出すと、皆で摘んできたミントを手際よくカップに入れていく。
「みんな上手にできたよ。さっ、持って行こう!」
それぞれ手分けして運んで行くと、リビングはミントと紅茶の香りが広がり、作戦会議で張り詰めていた空気がスッと和んでいった。
「何これ!凄いいい香り!クレア〜この葉ってミント?どっから持ってきたの?」
ハンジはカップに入っていた葉を指で摘むと匂いをかぎながらクレアに問いかけた。
「はい、ミントです。偶然ですがキッチンの窓から自生してるのが見えたんです。紅茶との相性も抜群なので入れてみました。」
「へ〜、そうだったんだ〜。」
興味津々にカップを覗き込みながら機嫌良く飲み干すハンジ。
そんな様子に安心しつつもクレアはドキドキと緊張しながらリヴァイの方をチラリと見ると……
「悪くない……」
ボソリとひとり言の様に呟いたリヴァイだったが、クレアの耳にはきちんと届いていた。
リヴァイの“悪くない”は褒め言葉だ。
これで104期の誰が紅茶を淹れても機嫌が悪くなる事はないだろう。
クレアはホッと胸をなでおろした。
ーそして夜ー
「それじゃあ私達は色々と準備があるから先に行くよ。」
そう言ったのは出発の準備を終えたハンジ達。
「ハンジさん…あの、お気をつけて…」
ヒストリアの替え玉を立候補したのは紛れもなく自分自身なのだが、いざ大好きなハンジと別行動になると、少なからず寂しい気持ちが芽生えてしまう。
「ちょっ!ちょっとぉ!そんな顔で私を見るなー!!そんな顔で見送られたら名残惜しくていつまでも出発できないでしょー!!」
「あっ…ハンジさん…!!」
ハンジは寂しそうな顔をしたクレアを見ると、いてもたってもいられず力一杯抱きしめ、右に左に揺さぶりながら地団駄を踏んだ。