第61章 104期との距離
「クレアさん……」
訓練兵団では自分が1番小さかったヒストリア。
体力はいつもギリギリだったし、対人格闘は苦手だった。
なのに、目の前にいる自分より少し小さな先輩兵士クレアは、太陽のように力強く微笑んでいる。
ヒストリアには明るく笑うクレアがとても逞しく見えた様だ。
皆命がけで今回の作戦を遂行する。
自分ができるのは心から成功を祈る事のみ。
誠に歯がゆいが、それしかできる事がない。
「す、すみません……私ったら…みんなが命がけで守ってくれてるというのに…私、作戦が成功する事をエレンと一緒に祈っています。なので、どうかご無事でいて下さい。」
「謝らないでヒストリア。大丈夫!!私ね、壁外調査で2回くらい死にかけた事があるの。でも今こんなに元気!自慢じゃないけど、悪運だけは強いみたいだから、安心して!」
ドンと拳を胸に当てて笑って見せると、ヒストリアの表情もいくらか和らいだ様にクレアは感じた。
「あ、ありがとう…ございます……」
「そうだ、しばらくは私兵長の班と行動が一緒になりそうだから言っとくけど、あまり私の事、年上って意識しないで?」
「……え?」
「今までずっと下っ端で動いてきたからいきなり先輩兵士って気遣われてもちょっと戸惑っちゃうんだ。私の同期も後輩もみんな死んでしまったし、年が1番近いのって104期のみんななんだよ。だから、食事とか掃除の手伝いも、一緒にやらせて?」
「クレアさん……」
「っていうのを、みんなにも伝えておいてくれると嬉しいな。」
にこにこと可愛らしく笑いながら気さくな振る舞うクレアに、ヒストリアもつられて笑顔になってしまった。
「は、はい…分かりました…」
「ありがとう!!それじゃあ紅茶もいい具合に出来上がった頃だと思うし、摘んだミント持って行こう!!」
そう言ってクレアが小屋の扉を開けようとしたその時だった。