第61章 104期との距離
確かに容姿からいっても、緊急事態が発生した時の事を考えても、クレアをヒストリアの替え玉にするのが適任だ。
本人もそう理解しているし、自分自身も同じくだ。
ただ、クレアを危険な目にあわせたくない、どんな男の手にも触れさせたくない。
そんな1人の男としての感情が、リヴァイの兵士長としての正しい判断を邪魔していた。
「兵長、絶対に失敗の許されない作戦です。私なら、例え身ぐるみを剥がされたとしてもそれだけでは正体はバレません。なので、私にやらせて下さい。」
クレアの目は真剣だ。
そしてここまで決意がかたいと何を言っても無理だろう。
「…分かった。クレアの言うように、替え玉誘拐が作戦の序盤でバレてしまえば俺たちは一貫の終わりだ。そこまで言うのであれば、ヒストリアの替え玉はクレアに任せよう。」
リヴァイは根負けした様にため息をつくと、睨んでいた視線をそらして許可をだした。
「ありがとうございます兵長…」
クレアは敬礼をすると静かに席についた。
「アルミン…クレアの立候補で女装は勘弁してやるが、もしもの時はお前の頭を頼りにするからそのつもりでろよ…」
「は、はい!!承知致しました。」
アルミンも慌てて敬礼をしてリヴァイに応えた。
「そしたらリヴァイ班プラスクレアは替え玉誘拐作戦組で、私達ハンジ班は黒幕を受け入れる場所と体制を整えておく…でいいのかな?」
「あぁ…そういう事になる。」
「そしたら私達の新たな潜伏場所を考えなくてはならないね…ん〜それに色々と用意するものもある。」
ハンジは地図をひろげながらアレコレとメモをしている。
「………っ!!」
何気なく覗いた買い出しメモに、クレアはヒヤリと変な汗が背筋を伝った。
できればこんな物は使いたくないが、使わなければならないと判断した場合は本気で使うのだろう。
クレアは絶対に、何があっても失敗できないと、心の底から感じた様だ。