第61章 104期との距離
「兵長…この作戦はリスクの高いものだと仰ってました。戦闘力も大切ですが、誰が替え玉をやるかも非常に重要なポイントになるかと思います。確かにアルミンはヒストリアと似かよう所がありますが、男性です。万が一身体に触れられでもしたら、替え玉である事がすぐに分かってしまいます。私は、髪の色も目の色もヒストリアと同じで、そして女です。私が適任だと思います。」
リヴァイは自分が男から暴力を受けた過去がある事を考慮し、また個人的な感情から替え玉に指名しなかったと、クレアはそう思っていた。
アルミンがヒストリアの替え玉なんていくらなんでも無理がある。
もし、うまく誘拐されてもアルミンが男だと分かってしまえばもうその先へ進む事ができなくなる。
ここはどんなに危険でも自分が引き受けるべきだ。
「…………」
クレアの思っていた事が図星だったのか、リヴァイは鋭く睨みながらもなかなか反論の言葉が出てこない。
「それに、戦闘力なら兵長とミカサがバックにいてくださればカバーできます。ですが、何か緊急事態が起きた時にアルミンが兵長の側にいないのは致命的です。失敗の許されない作戦であればある程、アルミンの才覚が必要になる場面が出てくる可能性が高いですから。」
クレアの言ってる事は正しい。
リヴァイは仕事に私情は挟みたくなかったが、未遂といえどクレアは2度も男から襲われた過去があるのだ。
これ以上トラウマを作るような事はしたくなかったし、何よりもクレアが誘拐されるなど、作戦だとしても受け入れる事ができない。
さらに言えば、突入を仕掛ける前にクレアが他の男から乱暴される様な事があったら自分の頭は、そして身体がどんな行動にでるかまったく想像つかない。
自身の立場や作戦も忘れて独断行動でその男を殺してしまうかもしれない。
そんな事は絶対にあってはならない。
だからアルミンをヒストリアの役をさせる事にしたのだが、当の本人から立候補をされてしまった。