第61章 104期との距離
リヴァイの言わんとしている事が理解できたのか、反論や別の作戦は出てこなかった。
「決まり…だな。そしたら誰が替え玉をやるか、たが…おい、まずはエレンの替え玉を立候補する奴はいるか?」
「…………」
リヴァイがグルリと見やりながら問いかけるが、誰も手を上げる者がいない。
「ったくしょうがねぇな…誰も手をあげないなら指名でいくぞ、そうだな…」
腕を組んだまま1人1人の顔を見て、少し考え込むと、リヴァイは指をさして指名をする。
「エレンはジャン、そしてついでに指名だ、ヒストリアはアルミンがやれ…」
「………!!」 「えぇ……?!」
ヒストリアの役を命じられたアルミンは当然驚く。
だが、ジャンはエレンの替え玉をやらさせるのはこれで2度目だ。
なんとなく予感と覚悟はあったのか、ジャンは険しい顔をしながら諦めたように頷いた。
「ちょっと待ってよリヴァイ、ヒストリアがアルミンってちょっと無理がないか?そもそも性別が違う!」
「そこまで無理ではないだろ?ジャンは以前も替え玉をやった事があるからカツラ1つで十分。それにアルミンはヒストリアと髪の色も目の色も同じだ。髪型をそれとなくいじって女の服を着せれば問題ない。」
「た、確かにそうかもしれないけど…」
口をはさんだハンジだったが、それ以上は反論できず黙ってしまった。
しかし、女の替え玉に男を使うという事に少なからず不安があるような表情だ。
ハンジが“本当に大丈夫か?”と言いたげな表情でうんうんと唸っていると、ある人物が手を上げ立ち上がった。
「恐れながら兵長、ヒストリアの替え玉は、私が適任かと思います。」
手を上げたのはクレアだった。
「お前は駄目だ…戦闘力は1人でも惜しい。クレアは立体機動だけでなく対人格闘の成績も悪くなかったよな?お前は戦闘側に必要だ。」
「兵長…」
リヴァイはサラリと却下したが、これは本当の理由ではない。クレアは直感でそう思った。