第60章 新・リヴァイ班、始動
クレアは少し心配そうにリヴァイに声をかけたが、リヴァイはエレンの方を見たまま続けた。
「このまま時間が経っていい事なんて1つもねぇ。次は何だろうな?巨人が地面から現れるかもしれねぇし、空から降ってくるかもしれん…人類は依然牙の生えねぇ捕食対象のままだ。とにかくクソな状況だせこりゃ。」
「………」
リヴァイの正論にどんどんエレンの顔色が悪くなっていく。
「兵長、エレンは全力を尽くしました。」
「ミカサ、それくらい俺でも分かる。でもだからってどうした?頑張ったかどうかが何かに関係するのか?こいつは今穴を塞げねぇ!」
「へ、兵長…お、仰りたい事は理解できますが…そ、そんなにエレンを責めないで下さい。」
硬質化の仕方など、ここにいる人間は誰も知らないのだ。そして、つい最近巨人化できる事に気づいたばかりのエレンも当然だが分からない。
リヴァイの言ってる事は正論たが、こちら側が無理難題を押し付けているのも事実。
クレアは少し不安げにリヴァイの顔を覗き込んだ。
「はぁ…クレア。俺は口が悪いだけで別に責めちゃいねぇよ。不足を確認して現状を嘆くのは大事な儀式だ。」
「兵長…?!」
「いいか?ここの壁の中は常にドブの臭いがする空気で満たされている。それも100年以上ずっとだ、この壁の中はずっとクソなんだよ。それが現状だ。俺がそれに気づいたのは初めて壁外に出た時だった。なんせ生まれたときからずっとこの臭ぇ空気を吸ってきたからな。これが普通だと思っていた。だが、壁の外で吸った空気は違った。地獄の様な世界だが、そこにはこの壁の中には無い自由があった…俺はそこで初めて自分が何を知らないかを知る事ができたんだ…」
問答している時間などないからだろうか…
はたまたエレンの努力は評価をしているのだろうか…
いつもより熱の入った事を語ってくれたが、エレンもミカサもヒストリアも頭に疑問符を浮かべている。
3人には少しリヴァイの言い回しは難しかっただろうか。