第60章 新・リヴァイ班、始動
「すみません…覚えていません。」
その発言についてもエレンは覚えていなかった。
「そうか、その後は30分程苦しみ続けた君は、恐らく自分の意志で巨人から出てきた。その時から記憶の混濁が見られ、意識が曖昧だった。」
そして続けてハンジは2回目、3回目の実験結果をエレンに報告した。
「2回目は巨人化できても命令には従えていない…3回目は巨人化すら不完全…そんな…オレはいったい…」
「特に3回目は、巨人と君とがより深く一体化しかけて、私の力では引き剥がす事ができなくて、ミカサに切ってもらったんだ。本当はそのままエレンと巨人の融合について実験していたいとも思ったんだけど…クレアからキツく叱られてしまってね…ってこんな話はどうでもいいね!これで報告は以上だよ。」
ハンジが報告を終えると、厳しい顔をして聞いていたエレンがガクッと肩を落として呟く。
「……それでは……少なくとも…直ちにウォール・マリア奪還作戦をやる事は無理になったわけですね…オレが…硬質化できなかったばっかりに…」
これではやる気だけは立派なただのろくでなしだと、エレンは奥歯を噛んで悔やんだが、悔やんだ所で事実は何も変わらない。
そしてそんなエレンの言葉にみな返す言葉がみつからず、部屋の中はシンと重苦しい空気になってしまった。
確かにエレンの言うとおり、今すぐにウォール・マリア奪還作戦はできない。
素早く穴を埋める事ができるのは、あの硬質化の能力があって初めて実現可能なのだ。
だからといって、いまだ謎だらけの巨人科学。
硬質化できなかったエレンだけを責めることはできないのだ。
そんな中、重たい雰囲気を見かねたリヴァイがため息をつきながら口を開く。
「あぁ、その通りだ。俺達は、そりゃあガッカリしたぜ…おかげで今日も空気がドブの様に不味いな。」
「兵長…?!」
リヴァイはいったい何を言うつもりなんだ。