第60章 新・リヴァイ班、始動
「え?…どういう事ですかクレアさん…」
「巨人化の実験は3回やったの。最初の1回目は、意思の疎通も取れてたし、私には途中までは順調に思えたんだけど…」
「エレン、ウォール・マリアの穴を模した洞窟を硬質化で埋める事を実験の目的として巨人化してもらったんだけど、何も起こらなかったら、耐久テストと知能テストをやる事にしていた。ここまでは覚えてる?」
「は、はい。事前の打ち合わせは覚えているのですが…しかし、巨人化した後の事は何も覚えていなくて…」
「まぁ、そうだよね…」
ハンジはまとめた実験結果の報告書をペラペラとめくりながら、昨日起こった事をエレンに話し始めた。
「1回目の巨人は15m級だった。硬質化が起きなかったから、予定通りに耐久、知能テストに移ったんだよ。まずは身体の動きを真似たりする簡単な命令を聞いてもらった。意識もはっきりしていた様で、誰の命令にも全て応えてくれた。そしてロープや丸太を使った作業もしてもらった。かなり細かい事までできて驚かされたよ。巨人化した君なら簡単に城を建てる事ができそうだ。」
「そ、そんな事までしたんですか……」
命令を聞いたり、建物を作ったり、ハンジの話だと順調に実験は進んてる様だったが、エレンはまったく覚えていなかった。
「うん…でもね、喋る事に関しては上手くいかなかったんだ。どうやら口の構造が発言に向いていなかったんだね。」
「そう、だったんですか…」
「そして、1時間が経過したあたりで変化が現れた。喋れない代わりに地面に文字を書いてもらったんだけど…最初は“どうやったら硬質化できるのか分からない”といった内容を書いていたんだけど…突然脈絡なく“父さんが”“オレを”と書き出したんだ。」
「え?」
「それ以降は何を書いているか読み取れない程乱れたんだ…苦しそうにしてね…何か思い出さないかい?」
エレンの父、グリシャ・イェーガーはこの巨人の世界に関わる深い人物で今は行方不明とされている。
巨人化している最中にそんな発言がでるなど、何か関連がありそうなのだが…