第60章 新・リヴァイ班、始動
「エレン!おはよう!気分はどう?具合の悪い所はない?」
「あっ!ハンジさん!兵長に…みんな…」
エレンはベッドからおりて敬礼をしようとしたが、目眩を起こしたのか立ち上がる前にふらついてしまった。
「あっ…エレン!無理しちゃダメ…ほら、これを使って…」
クレアがミカサの持っていた桶を受け取りタオルを絞ると、温かくなったタオルを渡してやる。
「あ、ありがとうございます…」
受け取ったタオルでゴシゴシと顔を拭くと、少しずつ頭がクリアになってきたような気がした。
「水は飲める?…?丸一日眠っていたの…少し飲んだ方がいいわ…」
次はヒストリアから水差しを受け取ると、グラスに注いで渡す。
「す、すみません…おれ…丸一日も眠っていたんですね…」
「あぁ…でも…よかった…元に戻って…」
ハンジはモブリットがスケッチしたエレンの顔と今の顔を見比べながらホッと胸を撫で下ろす。
「え?…何の話ですか?」
「ミカサに削がれずに済みそうだ。」
「ハ、ハンジさん?」
まさかの失態に落ち込んだ様子を見せたエレンだったが、ハンジの第一声は自分の身の安全が保証された事に対する安堵の言葉だった。
エレンは当然だがハンジの暴走など覚えていない。
「それよりどんな実験をやったか覚えている?」
「それが…実験が始まった時から記憶がありません。“硬質化”どうでしたか?」
「残念ながら…巨人化したエレンにそれらしい現象は何も起こらなかったよ。」
「そ、そんな……」
丸一日寝ていた上になんの収穫も無し。
あれだけやると豪語したのに…
一瞬にして全身が鉛の様に重くなる感覚を覚えた。
「本当に何も無かったんですか?」
「あぁ…実験が終わった後も巨人化した身体に何か残ってないか調べたけど、何も残ってなかった。」
「でもエレン…本当に少しも覚えていないの?」
クレアは少し不思議そうに問いかけた。