第9章 駈けだす想い
もの影から出てきた新兵が倉庫の重い扉を閉めてしまう。中は小さなランプ1つに火がついてるのみで、ほとんど何も見えない。
「あなた、ザズね!さっき、ハンジさんが呼んでるって言うのは嘘だったのね!」
クレアは身をよじりながら背後を睨みつけた。
「あぁ…嘘だ。悪かったな。」
「何をする気?!」
「…最初の壁外調査で、新兵の4割は死ぬそうだ…俺たちが、その4割に入ってたら、もう残された命はあと数日だ…」
「悪いが、死ぬ前の慰めになってくれ!」
もう1人の新兵がクレアの立体機動をはずし、胸ぐらを掴むと、思い切り地面に押し倒し馬乗りになった。
──ドンッ!──
「痛い…!やめて!あなた達は間違ってる!こんなことしたって、なんの慰めにもならない…」
仮にも彼らだって志高くこの調査兵団に入団したのだ。
こんな事をして道を誤って欲しくはない。
「や、やめて!お願い!正気に戻ってよ!あなた達だって、色んな想いがあって調査兵団に入団したんでしょ?!」
「あぁ!そうだよ!シガンシナ区の襲撃で家族全員巨人に食われた!最初は仇をとろうと思ったさ…でも…見ちまったんだよ…家族だけじゃなく、大勢の駐屯兵が食われていく様を…」
新兵の顔が、絶望に歪む
「………!」
「俺たちもああやって食われてお終いかと思ったら、気持ちがどうにもならなくなっちまったんだよ!」
馬乗りになってた新兵は、クレアのシャツを力いっぱい左右に引っ張り、下着ごと引き千切った。
破れたシャツを口に無理矢理つめられると、声をだすことができなくなってしまった。
まさかの事態に抵抗したいが、上半身はザズに押さえつけられ、下半身は馬乗りにされていて見動きがまったくとれない。
馬乗りになっている新兵はあらわになった胸を乱暴に掴むとクレアの首筋を舐め始めた。
近づいた顔から微かに酒の匂いがする。
目前の壁外調査に怖気づき、酒を煽ったのだろうか。
酒臭い息も
揉みしだかれる胸も
舌が這う首筋も
不快と嫌悪でしかなかった。
でも、男2人に押さえつけられてしまっては、抵抗の1つもすることができない。
クレアは悔しくも、ハンジとリヴァイの忠告を今ここでやっと理解する羽目になった。
後悔しても、もう遅い…