第9章 駈けだす想い
「あ……いった…ごめんなさい!?ってフレイア?」
「あ!クレア!やっぱりここにいた。一緒に兵舎戻ろうと思ってきちゃった。」
入り口でぶつかったのはまさかのフレイアだった。
今日も訓練でだいぶ汗をかいた。急いで風呂に入りたいし、フレイアとエルドの話も聞きたい。
でも今はハンジの呼び出しがあるのでいち早く向かわねばならなかった。
「ご、ごめん!フレイア!実はハンジさんが私のこと探してたみたいで…」
クレアはあたふたとなりながら説明する。
「そっかそっか、大丈夫だよ。じゃあそれ、私が片付けといてあげようか?」
フレイアはクレアが抱えていた鞍と頭絡を指さした。
「いいの?ありがとう!」
クレアはフレイアに渡すと笑顔で手を振りながら走っていった。
「あとで、エルドさんの話聞かせてねー!」
「ちょっ!クレア!声大きすぎ!」
フレイアは一瞬真っ赤になると、やれやれといった感じに鞍を片付けにいった。
クレアは走って予備馬の厩舎まで急ぐと、こちらの馬達もすでに夕方の飼い葉を食べているところだった。
水もキレイに交換してあり兵士達の姿は見られなかった。
みな訓練と世話を終え、兵舎に戻ったのだろう。
予備馬の馬具倉庫に向かうと、倉庫の扉は少しあいていた。
少し錆びついた重い扉を両手でスライドさせると、クレアは尊敬してやまない我が分隊長の名前を呼んだ。
「………ハンジさん?………クレアです。」
暗い倉庫の中に、オレンジ色の夕陽がさしこむが、ハンジの姿が確認できない。
クレアは中に入って今一度ハンジの姿を探した。
「ハンジさーん!いないんですか?」
すると、倉庫のもの影から1人の兵士がでてきた。
「本当にきやがったのか……」
「え?!誰?」
もの影からでは、はっきりと姿が確認できないが、訓練兵団で一緒だった新兵のようだ。
「クレアはハンジ分隊長にべったりだからな。分隊長の名前を出せばくると思ったよ。」
今度は背後からだった。
聞き覚えのある声に振り向こうとしたが、時すでに遅し、顔を確認する前に後ろから羽交い締めにされてしまった。
「イヤッ!何するの?!」