第60章 新・リヴァイ班、始動
「撤退するぞ!周囲を見張れ!」
「目撃者がいないかくまなく調べろ!!」
「……やっぱり駄目だったか…」
見張りをしていた班員が周囲を警戒しているうちに、エレンを馬車の荷台に乗せて素早く撤退だ。
こちらを探っている輩に居場所がバレる様な事は絶対に避けなければならない。
「ヒストリア、お前はエレンと同じ荷馬車に乗れ…」
「はい!」
「クレア、お前もだ。荷台に乗ってエレンの応急処置をしてやれ。デイジーは俺が連れてく。」
「分かりました。ヒストリア、さ、行こう!」
クレアがヒストリアの手を引いて荷台に乗ると、もうすでにエレンとミカサとハンジがいた。
「の、乗りました!モブリットさん!出してください!」
「分かった!!」
荷馬車の馬に乗っていたモブリットに声をかけると、一行は一足先に小屋へと向かった。
「エレン!!しっかりして!」
「クレア〜!!早くっ!!お願い早く診てやってー!!ねぇ!コレって元に戻るのか?!元に戻るよね?」
「ちょ、ちょっと待って下さいハンジさん!こうなると、私ではどうする事も…とりあえず、身体を冷やしてあげましょう。」
クレアは荷台の隅に用意してあったバケツの水で大きめな布を濡らして絞ると、蒸気がでている部分にかけて冷やしてやった。
「…………」
だが、水で濡れた布もエレンから発せられる熱と蒸気で一気に熱くなってしまう。
こんな処置、焼け石に水状態だ。
しかし、こんな熱を体内に抱えたままでは意識は戻らないだろう。クレアは何度も布を水で濡らし直しては身体を覆ってやった。
「失った部位は回復するはずなのに…なかなか腕も顔も戻りませんね…回復させる力がなくなる程疲弊しているという事ですねきっと…」
「うん…って事はちゃんと休めば大丈夫だよ!多分!ちゃんと元の男前に戻るって!多分!!」
ハンジはエレンに声をかけながらもやたらと“多分”と強調している。
おそらく目の前にいるミカサの視線が痛いのだろう。