第60章 新・リヴァイ班、始動
「それじゃあ、状況を整理して方針を固めるぞ。まぁ、この短ぇ間には色々あったが、当初の目標が変わったわけじゃねぇ。要するにウォール・マリアにある穴を塞げさえすりゃいい。それさえ叶えば大抵の事はどうだっていい。隣の奴が巨人になろうが、毛むくじゃらの巨人が岩を投げてこようが、壁の中に多少巨人が湧こうがな…おいアルミン、上手くいきゃ素早く壁を塞げると言ってた話だ…アレをもう一度言って聞かせろ。」
その話とは、馬車の荷台に乗ってエルミハ区へ向かう時にアルミンが話した作戦だ。
「はい…巨人化したエレンの能力で壁の穴を塞ぐ…といった案です。壁は、どうやら硬質化した巨人の身体から作られたようなので穴を塞げるだけの質量をその現場で生み出すことができれば…もし、そんな事ができればですが…」
この話はあの時場車の荷台に乗っていたリヴァイにハンジ、クレア、エレン、ミカサ以外の人間は初めて耳にする作戦だ。
「従来の作戦の様に大きな資材を荷馬車で地道に運び続ける必要はありません。つまり天候次第では巨人の活動しない夜に現場を目指すやり方も考えられます。馬だけならトロスト区からシガンシナ区に続く道を一晩で駆けることができますし、この理想が叶ったら…ウォール・マリア奪還に掛かる作戦時間は…1日以下です…」
1日以下……
そんな事が本当に…
この話を初めて聞いたメンバーの表情はそう言いたげな顔をしていた。
「改めて話してみてもやっぱり雲を掴む様な話にしか聞こえませんが…」
「その雲を雲じゃないモノにできるかはこいつ次第だがな…」
「…えぇ、承知しています。」
アニに捕われた時、ライナーとベルトルトに攫われた時、自分を助けるために大勢の兵士が命を落とした。
あんなに良くしてくれたエルド達まで一瞬にして殺されてしまった。
何がなんでもやるしかない。
大きなプレッシャーがのしかかるが、リヴァイの言葉には真っ直ぐと答えた。
「聞いたかハンジ、こいつはやる気だ。そして実験の場を見繕うのはお前だ。」
「……あぁ、もちろん私が生きてる内はそれは…私の役目だ。」
「あ?」