第59章 奇行種、奔走
「ぷっ……」
「これは巨人が人を殺したんじゃない。人が人を殺したんだ。俺達は何十年もこういった現場で仕事をこなしてきた。お前らは現場調査から犯人に辿り着いた経験が何回あるっていうんだ?もし一度も無いんだったらこれ以上喋るな、邪魔もするな。さっさと巨人の数でも数えにいけ!!」
「…………」
得意げに持論を語りながらにじり寄ってくる憲兵に、ハンジはある事に気がづいた。
「プハッ…」
「まいったな、ビビらせすぎちまった…なぁおい?歩けるか?」
「中央第一憲兵団……?」
ハンジは偉そうににじり寄ってきた憲兵のジャケットの紋章に記された文字をボソリと読み上げた。
「なぜ…王都の憲兵がこんな最南端のトロスト区に?」
「妙に年くってると思ったら…この辺の憲兵じゃなかったのか…」
「…そんなに不思議か?治安が悪化して兵士が足りてないこの状況が?端側のこの街には特に必要なんだよ。お前らの様な出がらしと違って使える兵士は今忙しい!」
すると、ハンジは少し沈黙した後にとんでもない行動に出た。
「あぁ…なんだそんな事ですか!自分が使えない兵士をやってるせいかな…偉いとこの兵士さんにビビっちゃいました…握手させて下さい!!!」
「分隊長…?!」
急に態度を豹変させたハンジにモブリットは驚愕したが、さらにハンジは続けた。
「クレア!!何をボーッとしてるんだ!お前も握手の1つくらいさせてもらえ!!」
今度はクレアにも握手をする様命令をしたのだ。
クレアは最初こそモブリット同様驚愕をしたが、何か考えがあるのだろうと読むと、すぐに立ち上がりもう1人の憲兵の手を握った。
「は、はい!!大変失礼致しました!………!?」
すると…とある事に気付いたクレア。
握る手にギュッと力を込める。
「ふん……」
気分が良いのか悪いのかは不明だが、2人の憲兵はまんざらでもなく手を握らせていた。