第59章 奇行種、奔走
ちょうどその頃、いつもの時間に目が覚めてしまったクレアはリヴァイの執務室へと向かっていた。
部屋の主リヴァイは、昨日の昼過ぎにコニーと共にエレン達が潜伏している所まで行ってしまったため不在だ。
リヴァイはいないが、この所忙しくて掃除がゆき届いていない箇所があった。
この時間に済ませてしまうのが1番いいだろう。
そう思って長い廊下を歩いている時だった。
「あら…?」
遠くからバタバタと早朝の廊下を走る音がする。
その足音はこちらに向かって来ているように聞こえるが、こんな時間に誰だろうか…
そんな事を考えていると、見えてきた顔はクレアのよく知る人物だった。
「ハンジさんに…モブリットさん!こんな時間にどうしたんですか?」
「クレア…?!ここで何してるの?」
2人共血相を変えて明らかに様子がおかしい。
いったいどうしたのだ。
「わ、私はいつもの時間に目が覚めてしまったので…兵長の執務室へ行って、この所忙しくてできてなかった細かい掃除をしようと思ってたのですが…」
「そうか…ごめん!それは今度にしよう…クレアも来て!!」
そう言ってハンジはクレアの手を取ると返事も聞かずに走り出す。
「えぇ!?ハンジさん…!」
「ニック司祭が……死んだ…」
「え?!」
「いまさっき、モブリットがニックの様子を見に部屋に行ったら…憲兵がニックの部屋を封鎖していたそうなんだ…」
話によると、モブリットが部屋に行った時点でニックは死んでおり、何故だか憲兵が部屋を封鎖していたと言う。
確かに殺人事件などが起これば、そこから先は憲兵の仕事だ。だが何故調査兵団内の施設で起こった殺人にいち早く憲兵が気付き駆けつけたのだ。
ニックの事情は調査兵団内全ての人間が知っている。ニックの身の回りの事はハンジが全てやっていた。何かあれば必ず1番にハンジへ報告が入らなければおかしい。
いったい誰がハンジを素通りして憲兵に通報したのだ。
3人は全速力でニックを匿っていた部屋へと向かった。