第59章 奇行種、奔走
「だいぶ無茶をさせたからね…機嫌を損ねて怒っているのではないかと思ったんだ。」
「大丈夫ですよ。皆さん交代で馬房の掃除や運動をしていましたが、落ち着いてますのでご安心下さい。」
「そうか…」
しかし、何も心配する必要は無いはずなのに、何故だかエルヴィンはベッドからおりようとしている。
「エルヴィン…?!」
「だ、団長…どうされましたか?」
ベッドから出ようとするエルヴィンに2人は驚くが、当の本人は涼し気な顔で答える。
「少し様子を見てくるよ。明日からは私も動かなくてはならないからね。少し身体を動かしておかないとキツイだろう…」
「えぇ!?シェリルに乗るんですか?」
「無理はしないから大丈夫だよ…」
そう言い残すとエルヴィンは自分で点滴の針を外すと、手を振って部屋を出て行ってしまった。
「ハンジさん…団長、大丈夫なんでしょうか?」
「まったくしょうがないね!まぁどっかで倒れたらシェリルが教えてくれるよ。さ、私達も仕事をしよう。こっちも準備ができ次第リヴァイの所に合流したい。まずはエレンの巨人化実験と、硬質化の訓練をどうするか皆で話し合おう。みんなもう私の執務室に集まってるよ。」
「わ、分かりました!!」
クレアはエルヴィンの事が気になったものの、空いたスープカップの乗ったトレーを下げると、ハンジと共に部屋を後にした。
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しかし、悠長に作戦を考える時間など与えぬと言わんばかりに事件は起こりハンジ達を震撼させる。
ー翌朝ー
「い…いったいどういう事ですか?何故あなた方が?」
早朝とある場所を訪れていたモブリットが予想していなかった展開に驚愕をする。
「な…なんだって…?!」
モブリットは回れ右をして急いでハンジの自室へと向かった。
ードン!ドン!ー
「ハ、ハンジさん…!!分隊長!起きて下さい!!」
「なんだよモブリット…」
中から出てきたのはボサボサの髪に兵服のまま寝ていたであろうハンジの姿。
目を擦りながらボヤくが、モブリットの報告にカッと目が開くと、ハンジはイスの背もたれに引っ掛けていたジャケットを掴んで部屋を飛び出した。