第59章 奇行種、奔走
「つまり…巨人の正体は、人間であると…そういう事かハンジ?」
「全ての巨人がそうであるという確証はどこにもありませんが…ただ…そうなると巨人のうなじの弱点に何があるのか分かる気がします。」
「…どういう事だ?」
「何故個体差が大きく違う巨人の弱点が皆同じ大きさなのか…“縦1m、横10cm”には何が該当するのか…もしそこに人の大きさのままの一部があるとすれば…それは…“脳から脊髄”にかけての大きさに当てはまります。そこを切除されると、そこだけ修復されずに全ての機能を失うのは、それが巨人の物質とは独立した器官であるからでしょう。」
「お前が生け捕りにした巨人は毎回うなじを切り開いてパァにしちまうじゃねぇか…何かそれらしいもんは見なかったんだろ?」
「あぁ…特に人の変わったものは見なかったけど、そもそも一太刀入れる程度ではすぐに塞がるようなうなじだから完全な人の脳が残ってるわけでじゃないだろうけど…でも確かに脳と脊髄と同じ大きさの“縦1m横に10cm”の何かがそこにはある…おそらく同化して姿形がわからなくても確かに…」
「何言ってるのかサッパリわかんねぇなクソメガネ…」
「あ、あぁ…そうだね…ごめん…!」
アレコレと持論を話しだすハンジに突っ込みを入れたリヴァイだったが、ハンジの話を今一度自身の中で噛み砕くと、少し俯いてボソリと呟いた。
「じゃあ…何か?俺が必死こいて削ぎまくってた肉は実は人間の一部で、俺は今まで人を殺して飛び回ってた…ってのか?」
リヴァイは地下街に住んでいた頃、人を殺した過去がある。だが、それは自分等を殺そうとしてくる大人から、自身と仲間の命を守るためだ。
だが、今のハンジの話を聞く限り、なんの罪もない人間が何らかの作用によって巨人化させられたという事が有力説となる。
もしそれが事実なら、壁外にはびこる巨人は自身の意思とは関係なく、なりたくもない巨人にさせられ、自分の様な兵士に殺されていた事になる。
いくら人間を食う巨人だからといって、その正体の裏側にそんな秘密が隠されていたというのならば、あまり後味の良いものではない。