第59章 奇行種、奔走
「無事にお目覚めの所悪いが、この1週間は聞くだけで寝込みたくなる事しか起きてねぇぞ…」
「いや、いい…団長という立場で1週間も呑気に寝ていたんだ。気付け薬にちょうどいいくらいだ。続けてくれ…」
「……右腕は痛むのか?」
クレアに対してとった行動は許せたものではないが、エルヴィンは利き手である右腕を失ったのだ。
いくら悪態をつくリヴァイとて何も感じてないわけではなかった。
「今は薬が効いているから痛まない。大丈夫だ。」
「そうか……」
そんな自分の腕を気遣うリヴァイの言葉に、エルヴィンは気丈に答えた。
「……今まで俺が巨人に何百人食わせたと思う?腕1本じゃ到底足りないだろう…いつか行く地獄でそのツケを払えればいいんだがな。」
「そりゃええのう、エルヴィン…その際は地獄でご一緒させてもらえるか?」
「どうしたじいさん、さすがに参っちまったか?酒か足りてねぇ様だが…」
「あぁ、今こそ酒にすがりたい所じゃがの、取り上げられちまっとる。ワシのおしめの面倒までは見てくれんようじゃ…」
そう言いうとピクシスはアンカの方をチラリと見るが、アンカはため息で返すという実にドライな反応だ。
いくら身体のためだからといっても、駐屯兵団トップのピクシスから問答無用で酒を取り上げるなんて芸当は、おそらくアンカにしかできないだろう。
「ハハ…優秀な部下をお持ちですな。」
ーコンコンー
すると、扉をノックする音が響いた。
「…どなたでしょうか?」
「ハンジだろう……」
クレアが扉を開けると、リヴァイの予想通り入ってきたのはハンジだった。
コニーも一緒だ。
「エルヴィン、失礼するよ。あ、クレアもここにいたんだね。」
入ってきたハンジはクレアの頭をポンポンと数回撫でると、エルヴィンとピクシスに敬礼をした。